何が少女を殺人衝動に向かわせたのか その1

2022年8月26日

8月20日夜、渋谷区路上で53歳の母親と19歳の娘が刺された事件で警視庁は殺人未遂容疑で戸田市立中3年の少女を逮捕しました。

過去の通り魔事件を思い出させますが、余談を排して、できるだけ報道からわかる事実に基づいて、なぜ起こったのか、そしてどうすればよかったのか、今後どうすればよいのかを、中学生と30年以上関わってきた私の経験と心理学的知見から考えていきたいと思います。

容疑者の少女は、中1の3学期からの不登校、現在週2回の保健室登校。母親の不機嫌さや怒りが顔に出る様子が、自分に似てきたことが嫌になり、母親の殺害を考え始める。母親は勉強を強いたり塾に行かないのを責めることがあったという。小さいころから母親に反抗することなく、おとなしく生真面目、冷静淡々としている。感情的になることはほとんどなかったという。

母親殺意に加え、弟が不憫になるから同時に殺そうと考え始める。普段から人を殺す願望があり刃物を持っていたが、当日朝は塾に行くと言って外出したが行く気がなくなり電車に乗り、最中に、勇気をもてるよう母と弟殺害の練習をしようと決意。渋谷で降りて人気のいないところを数時間探し、イメージに合った所で、たまたま通りかかった母子に死刑になりたいと思い狙いを定め、後ろからつけて、ついに実行に及んだ。

以上が事実であるとすると、計画的であるようでその場の行き当たりばったりの思い付きであるような二面性が色濃く見えてきます。そして、本人のおかれた状況から殺人へのかなりの飛躍があり大きな疑問点が浮かびます。また、母親殺人を企図していながら練習のため他人を殺して死刑になれば、母親にたどり着けなくなるという矛盾も見えてきます。

何がこの少女を殺人未遂へと駆り立てたのでしょうか。

 児童・生徒の不登校は改善せねばならぬ大問題ですが、今や中学生の4パーセントが不登校です。(令和2年度:全国平均)これは大きな要因としても更なる考慮が必要です。学校に行けない、行かないことにどの程度、どのようなストレスを感じていたのかです。私の経験上、不登校生の一部に強烈な自己嫌悪に落ち込み自尊感情が激しく傷つく生徒がいます。中には、このような自分にさせた親や社会を激しく責め攻撃的(他者のせいにする防衛機制の投射)になり、いわゆる家庭内暴力がおこることもあります。

 もう一つは母親からの勉強への指導・𠮟責と母親への嫌悪感ですが、鍵は母親の嫌な姿が自分に似てきているという供述です。相手の姿の中に、自分自身が心の奥深くに抑圧している「自分の嫌な面」を感じると、それが「自己嫌悪の投影」であると気がつかず、相手に対する嫌悪感を抱くことがあります。但し、本人の母親の嫌な姿が自分に似てきているとの話から、自分の嫌な面を気づいている節があり、客観的な視点、メタ認知は育っている可能性があります。中学生ころの視点は大人が考える以上に自己中心的になりがちです。他者の視点から見る習慣は容易についていないのです。この少女は自分の嫌な面は見えていて、それに嫌悪感を持っていたようですね。母親からの叱責・圧力と自己投影からの母嫌嫌悪、及び他者への攻撃性を伴った強烈な自己嫌悪がダブって、母親への殺意を持ったと推測されます。

しかし一方、母親への嫌悪感は思春期只中にある中学生にとって、当然でむしろ健康的なことであります。時には「うるせえ、くそばああ、死ね」などと罵ることが繰り返される家庭さえあるくらいです。問題はまじめでおとなしく感情的・反抗的なことはほとんどなかったという母親の話です。これは嫌悪感はあるのに表現しない家庭状況が見えてきます。表現できないほど圧力や恐怖を感じていたか、性格的にそんな態度は見せてはいけない強い思い込みがあったのでしょうか。供述からはわからないところですが、鬱積した思いは積もり積もってついに行きつくところまで他の誰もわからずにひそかに行ってしまったのかもしれません。(次回その2に続く)

2022年8月26日未分類

Posted by ジェイ・慈英