私は「無い」:無我とは何か その4~孤独社会のリスク~

私は「無い」:無我とは何か その4~孤独社会のリスク~

アメリカのジュリアン・ホルトランスタッド教授は2010年、148の研究、30万人以上のデータを対象とした分析を行い、「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて、早期死亡リスクが50%低下する」とする結果を発表しました。孤独のリスクは、一日タバコ15本吸うことまたはアルコール依存症であることに匹敵、(3)運動をしないことよりも高い、(4)肥満の2倍高い、と結論づけました。また、2015年の同教授の研究では、70の研究、340万人のデータをもとに、「社会的孤立」の場合は29%、「孤独」の場合は26%、「一人暮らし」の場合は32%も死ぬ確率が高まるとの結果を導き出しました。孤独による健康への悪影響は実に多岐にわたり、うつ病、統合失調症、薬物やアルコールの乱用といった精神的な疾患と同時に、心臓病、血管疾患、がんなど、ありとあらゆる病気のリスクを大幅に高めることがわかっています。太古の昔より人間は共同生活をすることにより生き延びてきました。社会集団における村八分などの孤独・孤立はそれこそ生きる糧を失い死に直結する事象だったのです。人間はその事態を避け、関係性を維持発展、安全環境を守るために記憶容量を増やすために脳を肥大させて来たことを既に述べさせてもらいました。

 孤独が病に至る道程は、孤独そのものがリスクと認識すると、絶えずストレスがかかり続け、副腎脂質ホルモンのコルチゾールが分泌し続ける。これが血糖値をあげていき、各細胞臓器に慢性的に炎症が起こる。血糖値を下げるためインスリンが働き続け膵臓に欠陥が生じやすくなる。脳内に起きた炎症によりうつ、不眠が続きアミロイドベータが増加し認知症発生リスクが高まっていく。‥‥と悪循環が起こることになります。

 この記事を書いているさなか、大変痛ましい事件が報道されました。長野県中野市で5月25日、女性2人が刺され、警察官2人が猟銃で撃たれて、死亡した事件です。長野県警は、自宅に立てこもっていた青木政憲容疑者(31)の身柄を翌朝確保し、殺人容疑で逮捕しました。 報道によると、青木容疑者は引きこもりがちだったとされ、「(死亡した女性2人に)自分が周囲から孤立しているように悪く言われたと思って殺した。射殺されると思ったので警察官も殺した」と言います。容疑者の心理状況は今後精査されるでしょうが、問題は引き金になっている”孤立している”と悪口を言われたと述べている所、他人との比較が程度を超え、極度に自尊感情が低下して行く状況で被害妄想が深刻化していったことが推定されます。事実は今後明らかになるでしょうが、孤独は他人への攻撃、最悪には殺意に至る場合もありうることが示唆されます。孤独への対処が急がれます。心理学の観点から今後対応を探っていきます。 

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Posted by ジェイ・慈英